入水から現在に至るまで・2
【
入水から現在に至るまで・1】の続き
▼次に真っ先に俺の目に映ったのはくすんだ赤。次に痛くは無いが何度も頭をぶつけてる自分に気付く。
『何だコレ?』
そう思った瞬間に水流にのまれ、鼻口から水を飲んだり吐いたりして思いっきりむせて無意識にもがいた。
どうやらさっきの赤は船底(側面?)のようだ。そして俺は引っ張られている…?
意外と冷静に(←と当時思った)物事を把握しようとしていたが、何で水に居て・何で引っ張られているのか分からない。
混乱している内にゴンゴンと頭を(軽くだが)打つし、吐いた分だけ水が入ってくる。何だコレ、何だコレ、何だコレ?
混乱して大きくもがいたのは覚えてる。
その時、
『生きてるぞ!!』
って馬鹿デカい声が近くでした。
気持ち悪くてゲボゲボ水吐いてたら、いつの間にか小さな浮輪(?)が腕に引っ掛かってた。
何度目だかの『何コレ?』が頭の中を反復する。
「しっかりしろーっ!!」とか「掴まれー!!」とか言われたっけ…?
掴まる力も無く頭まで沈んだ所を身を乗り出したオッサンに肩を捕まれた。
ミニ浮輪と俺の肩に掛かる手が上に引き揚げる。
またデカい声で『服が破れるぞ、掴めー!!』だか何だか言ってたかな…。
どれ位そんな事してたのか全く分からないが、船に男二人掛かりで引き揚げられたらしく、思うように動かない身体が自分の物じゃないような感覚がした。
寒くて頭はボーッとして、水を吐いた。
その間も何度も声掛けされて、オッサン達が警察っぽい事を理解する。
緊急時の状況把握能力は自他共に認める程高いのだが、我ながら結構記憶(記録)してるもんだなと振り返って思うよ。
「まだ低体温にはなってないな…」とか「名前分かりますかー!?」とかとにかく声がデカい。喋ろうにもガチガチ歯が鳴るばかりでなかなか応えれないでいたら、顔近くまで来てうんうん頷いてた。
俺…、何か言ってたっけな…。(多分)
毛布が掛かっていた事に気付いた辺りからまた意識が朦朧となった。
次に気付くと、(周囲が見えなかったが)何人かの救急隊員に運ばれてるっぽい状態だった。
やっぱりデカい声で色々聞かれ、今度は自分の意思で答えた。声はまともに出なかったが、実家の電話番号や名前を聞かれたように覚えてる。
息を切らした隊員が「若いもんは(多分運ぶのが)早いな」・「救急なんだから病院も色々聞かず入れてくれたっていいのにケチだよな」と割と軽くて普通の口調で雑談してたのが印象的だった。
この頃には(自分的には)意識がはっきりしてきたと思う。
失敗して死ねなかったのかと呆然としていた。
「バイタル下がってます」って言って何かやってたけど…、そのうち病院に着いた。
【続く】
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