不思議話7:あかい服の女

久我

2009年09月05日 23:30

中学の頃の話。

1年校舎はボロく、場所によっては床がギシリと軋んで沈み、不安を覚える生徒もいる。

自分は一番後ろの席。
黒板を正面に捉えると右後ろにあたる。

端っこには掃除道具の入ったロッカー、そしてそのすぐ近くの天井は天板が1枚壊れてズレていて薄暗い世界が顔を覗かせている。

「直せばいいのに…」

そんな事をぼんやり考えながら天井を眺めていたある日、ふと違和感を感じた。

誰かが、居る。
…背後に気配がする。

今は授業中、自分の後ろに誰か来たなら気付かない筈が無い。
およそこの世のもので無いモノが居るのは分かった。


クーラーも無い夏の教室は窓を全開にしても暑く、下敷きを団扇(うちわ)がわりにパタパタ扇ぐ音があちこちから響く。
そんな音に我を取り戻した時には背後の気配は消えていた…。



数日後、またあの気配がした。

今度は姿を目認する事が出来た。
20代後半、(当時で言う)赤いボディコンとでも言えば良いのか…、タイトで刺激的な服装だ(苦笑)
だが袈裟掛けに胴体が切断され、バッサリ無くなっている。

学校にそんな不釣り合いな女が現れた事が妙におかしくなって、何となく純粋に興味を持った。
女は特に悪意を放つ様子もない。

久我はじきに馴れ、女が近くに来ると涼しいので(特に構いはしないが)仲良くしてた。


「今日もあっついな…」とうなだれていた背中に
『ぴと…』とくっつかれた事もあった。

ひぇッ!っと声が出そうな異様な寒さが全身を包む。鳥肌が立つ。
女は明らかに『涼しいでしょ?(にっこり)』と言う感じでくっついている。


「いや…気持ちは嬉しいんだけど、[涼しい]通り越して[寒い]からもういいよ(;´Д`)」


心中で呟く様に伝えるとすぐさま離れてくれ、『ありゃ;失敗X2(苦笑)』な気配が伝わって来た。


優しいし性格可愛いし[気心知れた友達]として暫く仲良くやってたんだが、高校ではぐれてしまった。

元々土地に縛られてたクチではないので自由だったんだが、いざ居なくなると寂しいもんで…。

少しは捜したもんだが、胴体を探しにでも旅立ったのか、気配の痕跡すら全く見付からなかった。



例えるなら『夏目友人帳(漫画)』の夏目レイコみたいな風貌。
笑うと可愛くて、中学1年の頃は教室の天井穴からワザとちょい不気味ぶって顔出したりして、その癖おちゃめで…。

全然怖いとか辛そうな感じじゃなく『今の自分を愉しむ』人だった。

今の自分は過去に出会った奴らを手繰(たぐ)れるけど、彼女は胴体を見付けたらしく俗に言う[成仏]をしたようだ。


それでも時々想い出しては懐かしい顔に逢いたくなる、そんな自分が此処に居る。




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