不思議話18:日本人形

久我

2010年03月09日 08:55

※注意※自己責任で御覧下さい。



高校入って一番最初に仲良くなった子、ハルの家には髪が不揃いな日本人形がある。

話を聞いた当日、遊びに行きがてらに人形を『視る』羽目になった俺と、同じく事情を聞いて興味本位で付いて来る事にした河と、自転車に乗ってハルの家へ向かう。

ハルの親父は某やくざのNo.2だと言っていたような気がする。だから意外だと思ったのだが、家中は割とボロかった。


簡素で古い和室で昔ながらの円卓をぐるりと囲んで占領し、日本人形を出す前にまずはお茶を啜ってダラダラ一休み。

この直後にハルが畳に小銭をバラまき、「拾え」などと脈絡も無い意味の分からん事をしてきたので、「やめなよ~」とか言って小銭を拾い集めて渡してやろうとする河から小銭を分取って畳にバラまいた。

例の日本人形以前にハルの悪ふざけに切れた俺はハルに全部拾わせ、謝るまで赦さなかった。
自分の実力でもない親の傘きて図に乗るなと言う事言ったら人形放っておいて帰ろうと思ったが…、正直人形は気になっていたので説教の後に持ってこさせた。

高さ30cm程の硝子ケースから出してゾッとした。人形を出してる俺の両サイドで2人はギャーとかワーとか騒いでる。
人形の髪は確かに伸びている。
それよりもこの人形、生きてる…。こっち見てる…。

今にも動き出しそうな口元に目を奪われそうになるも『見ていては危険だ』と視線を外し、そそくさと人形をケースに戻した。
幸い2人は人形の視線にまで気が回ってない。

場の雰囲気を変えるべく幾つかのアドバイスの後『何処から人形を貰って来たの』と聞いた。
(当時の記憶を書いてて気付いたが[買った可能性]もあるのに何でそう言ったんだろう…。)

ハル曰く親父が貰ったらしいが誰から貰ったかは今は分からないとの事。
多分アドバイスを守っていないだろうし、もう会う事も無いだろうから暴露するけど…



あの人形、自らの意思で渡り歩く家を選んで…ハルの元に来たんだと思うよ。
家族面して佇(たたず)むあの人形は女の血気(けっき=力)を吸って生きている。

手放そうとしても確実に帰ってくるタイプだからな…。

あの一家、無事だと良いな…。





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