不思議話22:おつかれさま その壱

久我

2013年04月13日 04:20

切っ掛けは友人からの紹介だった。

『ツイッター繋がりの知人が憑物にやられているみたいなので助けて(祓って)欲しい』

当事者からの希望もあり、久我は仲介人である友人と共に出掛ける流れとなった。


渋谷ヒカリエで待ち合わせ。暫くしてやってきたその子は風が吹けば吹飛びそうな程に衰弱し、蒼白な面持ちで弱々しく咳込みながら現れた。
一目[視る]なり危険な状態なのが伝わる。自己紹介も程々に適当な店に入って話を窺(うかが)う事にした。


何かと人から怨(うら)まれ易いという彼女(当事者)の話を要約する。


ツイッター上で不調を語っていると、とあるフォロワーからある儀式を勧められた。2chで言う[おつかれさま(お憑かれ様⇒塩水に霊等を含ませ摂取させる術)]である。無知で無防備な彼女は言われるがままにソレを実行、結果は当然取り憑かれる羽目となった。

他にも以前から自室で嫌な感じがするからと盛塩をしてみたら、24時間しない内に逆富士の如く先端が黒く変色。興味を持った彼女は味が変わったのだろうかと変色部を舐めたのだという。


流石にそれには久我も仲介人の友人も呆れ果てた。

普通、厄除けに盛った塩が変色したら本能的に避けるものだ。色が変わった時点で食物としてもNGだろう。どこまで無知で馬鹿なのだろう。
一目視た時から喉(のど)を通って何かなってるなと思っていたが大当りだった。


店内で出された普通の水に気込めして症状にあったヒールウォーターを精製。気を抜き去った水との味の対比を楽しませながら、ヒールウォーターで内部から浄化を始めた。


体調を崩して仕事を休みがちになっていた彼女は、一人で留守番をしていた時にあった事例も話してくれた。
具合が優れず横になっていると電話が掛かってきた。放置しておくと、やがて留守番機能が作動してメッセージを促す機械音声が聴こえてくる。そして…


『もしもし もしもし もしもし もしもし もしもし もしもし もしもし もしもし もしもし もしもし もしもし もしもし もしもし もしもし』

それはあまりにも機械的で無感情に早口で淡々と─…。延々繰り返される不気味なメッセージに怯えながらも録音を消したくて電話を確認へ。するとメッセージ録音はおろか着信すらされていなかったのだという。


他にも雨の日だかに自室天井が抜けて寝ていた彼女に瓦礫が当たりそうになったり事があったり…。
瓦礫は何とか躱(かわ)せたものの天井修理の為に業者を呼んでみれば有アスベストなので修理以前に別の対処をしなくてはならない等と告知され、アスベスト直に触っちゃったとビビったり…。


そう語る彼女はヒールウォーターを飲みながら無意識に俯(うつむ)いていたが、医者にかかっても原因不明とされていた咳は停まっている事には気付かなかった様だ。
『咳停まったね』と教えると、可愛くハッとした顔で反応した。顔色も朱が差して幾らか明るくなっている。
内部浄化は良い感じに落ち着いたので『(間に合って)助かったね』と笑った。この機を逃して会うのを先延ばしにしていたら彼女は確実に死んでいただろうから。


内部が終わった所で外部に憑いているモノへの対処へと移行しなくてはならない。

どうやら『おつかれさま』以外でも結構な数に憑かれる起因を持っていた様で、彼女の傍には6だか8人位の霊が居た。仲介人の友人にも視えたので、食事しつつ、その中のイケメン霊の話でケラケラ笑いながら除霊した。


依頼料(御礼)を受け取って別れる頃には明るさと元気を取り戻し、しっかりした足取りになっていた。
仲介者である友人と久我は安心して馬鹿話をしながら帰宅したのだが─…、彼女に関してはこの件だけでは片付かなかった。


ツイッター上でも鬱陶しい勢いを取り戻した彼女は調子に乗ってフォロワー達に色々返事を返していた。
久我といえば依頼とはいえ彼女を助けなければ善かったかなと少し後悔していた。

後日、その勘が正しかった事を知る。



その話はまた明日w
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