不思議話9:車
高校生だった頃、友人宅からチャリでも余裕で30分は掛かる道を帰っていた時の事。
夜遅くにチャリを飛ばしていたので、ちょっと危なかったと思う。
大阪で[八尾]と聞くと解る人も居るだろうけど、治安はあまりよろしいと言えない方なので道を急いでいた。
途中、いつも気味悪くて見ない様にしてる神社前を通過して危なそうな十字路に出る。近くにベビー服の大型店がある交差点だ。
結構スピード出してる車が横切る上に街灯は少なく、人通りは無い。歩道も細くて無いに等しい所だ。
いつもなら車の往来が激しいのだが、その日に限って全く車が来なかった。
一応信号が赤なので停まっていると、前方にいつの間にやら妙な車が一台ちょこんと信号待ちしている。
その時『何が妙だったのか』を理解してなかったが、特に興味が無かったので信号が青になると同時に道路の左側(少し盛り上がった歩道)に向けてチャリをこぎだした。
車は動かない。
正面(つってもチャリだから端っこ)からくる自分が通り過ぎてから右折でもするつもりか?ウインカーは出してないが親切なこった。
そう思いながら車の左横(車とは数メートル前)歩道を走り抜けようとしたその時、突如凄いスピードで自分に向かって来た。
以前にも書いた様に久我はチャリ運転に自信はある。
咄嗟に急速加速して事なきを得た。
何せチャリケツ(後輪)の10~15cm後に車が突っ込んでた訳だ。
意味が解らないと同時に危険を察知して、考えるよりも先に体が動く…。
車はその場で方向転換をしてコチラに向かって来る。
度々歩道の低くなってる(チャリ等でも上がり易くなってるスロープ?)所を久我が通るタイミングを狙って轢こうとしてくる。
はねる気か?あの車の突っ込み方は恐らく本気だろう。
無茶苦茶だ…。
しかし地の利はコチラにある。
直線コースはきつかったが、細い路地があるエリアで車を躱した。
…車を撒いて、商店街近くの交差点まで来た。
この道を経由する事は予測しようが無い。
ほっと一息付きながら信号待ちをしていたら、隣に『スーッ』と(正に)音も無く一台の車が停まった。
…見覚えのある車だ。
仮に奴として、この交差点に来るには車だと遠回りしかない。
どうあっても時間計算が合わない。
それよりも隣の車に自然と目が行って初めて気付いた。
最初の曖昧な記憶では窓にフィルムでも貼ってるのかと思っていた。
しかしそれは誤解だった。
…誰も乗って無い…。
車内の空気が『にたり』と笑ったような気がした。
コ イ ツ は 俺 を 殺 そ う と し て い る 。
何だか知らんが否定から確信に変わった時、その車はゆっくりと先に滑り出し…俺の頭の中に[ある一言]を残して……直に姿を消した。
呪縛から解かれて安堵してからは、安全運転で無事帰宅したが、あれは死神でも乗っていんじゃなかろうかと今でも思う。
死神の容姿も色々あるが、茶けた骨と皮だけみたいな典型的な死神。
ソイツに
『よく気付いたな』
と言われたような気がした。
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