2009年08月22日

不思議話2:禿[かむろ]

何年か前の事。
珍しく亀有で飲んで帰る時の話である。

前後は忘れてしまったが、ぶらぶらと帰り道を歩いていて不意に気が付いた。
鶴の携帯が録音モードになっている。

随分と長い間気付かずにいた所為か、1時間位は入っているみたいだ。

何気なく再生してみると、飲みに向かう時であろう雑談が微かに聞こえる。


砂利を踏みしだく音、踏切のカンカンカン…、恐らく久我達と思われる小さな声、微かに何かを繰り返す女の子の声…。


酔いが一気に醒めた。

鶴は携帯をバッグの中に入れていた。砂利の音が間近に聞こえる事もおかしいが、そもそもそんな砂利道など無い。
踏切だってそうだ。通って来た道は踏切など無い。類似した音源がある筈も無く、入る訳が無い音が確かに録音されている。

なにより薄気味悪いのが女の子の声。
鶴にはよく聞こえなかったみたいだが、確かに『お母さんになって…』と繰り返している。

久我が何を言っているのかに気付いた瞬間、その声は『邪魔するな』と低い声(意思)を発した。


先程まで録音されていた内容はまだまだ続いている。
これ以上の再生はマズいと思った矢先にハッキリとした声で、しかしゆっくりからやや速く『お母さんになって』が繰り返され始めた。


鶴は気味悪がって、どうしたら良いのか解らずにいる。

携帯を受け取り、即座に[削除]する。
最後に聞こえた声は何だったか思い出せないが、この一件以来気分的に暫く亀有に近寄れなかった。

女の子の声と同時に視えたのが禿(かむろ)姿。何を思ってさ迷っているかは知った事ではないが迷惑な話だ。


…何故こんな話を思い出したかと言うと、久我は大阪の友人(霊感有)の相談に乗っていて、その一環で『視えてしまったモノ達』を記録したノートを送って貰ったんだが…。

そこには服装など少し変わったあの禿(かむろ)が描かれていて、その横に『お母さんになって』と一言書いてあったからだ。



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禿(かむろ)ウィキペディアより




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